「至上の印象派展 ビュールレ・コレクション」ー国立新美術館

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国立新美術館で開催されている「ビュールレ・コレクション 至上の印象派展」を見に行きました。2020年にチューリッヒ美術館へ移管される合間を縫って実現した展覧会で、これだけまとまった数が日本で見られる機会はもう無いかもしれません。

美術の教科書に出てくるような印象派を中心とした素晴らしい絵画の数々は眼福ものです。今回の展示は印象派だけでなく、印象派に至るまでの作品や印象派に影響を受けた作品をも網羅的に見せてくれます。

コレクションしたエミール・ビュールレはドイツ生まれで、後半生をスイスで過ごします。ビュールレは第一次世界大戦では兵士として前線に出ていたこともありますが、銀行家の娘と結婚したのを機に工作機械の会社を任されます。その会社で作った武器を売り巨額の富を得て、念願だった絵画のコレクションを始めたそうです(1944年にスイスが軍需関連製品の輸出を禁止したので、それ以降は民生品を生産)。

※特に断りが無い場合は、画像は「Stiftung Sammlung E. G. Bührle」(ビュールレ・コレクション)のサイトよりお借りしています。

写実的都市景観図

都市景観図の代表的な画家といえばカナレット。『サンタ・マリア・デッラ・サルーテ聖堂 ヴェネツィア』はそのくっきりとした画風と、いかにもヴェネツィア的な明るさが目をひきます。18世紀のイギリスでは、お金持ちの子弟がイタリアに長期留学するのが流行ったのですが、カメラなど無い時代に記念になるものとしてカナレットの緻密な風景画は飛ぶように売れたのだとか。

そして同じくサンタ・マリア・デッラ・サルーテ聖堂を描いた、シニャックの『ジュデッカ運河、ヴェネツィア、朝』。カナレットが同じ建物を描いてから170年近く経った1905年の作です。無数の点描の中に浮かぶ聖堂と運河は、さながら幻想の世界に建っているような気さえします。

マネとモネとゴッホとヴラマンクの風景画

『ベルヴェの庭の隅』は1880年マネの晩年の作です。梅毒により歩行も困難になってきていた時期の作品ですが、明るい陽光とおだやかで美しい庭の風景からは、そんな状態だったことはみじんも感じられません。いつまでも眺めていたくなる庭です。

モネの『ヴェトゥイユ近郊のヒナゲシ畑』。1879年の作です。ぱっと鮮やかな燃えるようなヒナゲシと、背景の街のやや沈んだ色のコントラスに惹かれます。ヒナゲシは細かく点描し、街はやや粗いタッチで描いているため、画面に抑揚がついています。

ゴッホ『日没を背に種をまく人』(1888年作)は、太いリンゴの木が大胆に画面を分割しています。浮世絵の影響が良く分かる構図です。

ヴラマンクの『ル・ペック近くのセーヌ川のはしけ』は1906年の作です。力強い線と明るいポップな色が気に入っています。ずっと見ていると色彩の持つエネルギーに圧倒されそうです。

可愛いイレーヌを巡る逸話

今回の目玉のひとつ。ルノアール作『イレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢』です。この絵にまつわる話として、東京新聞に「幻の少女を追って」という短期連載記事がありました。

<幻の少女を追って 至上の印象派展を前に> (上)一時はナチスの手に
<幻の少女を追って 至上の印象派展を前に> (中)「あの絵は大嫌い」
<幻の少女を追って 至上の印象派展を前に> (下)長女の記憶を求めて

イレーヌは1872年に、パリに住む裕福なユダヤ人銀行家の長女として生まれました。絵のモデルとなったのは8歳の時です。当時は画家に肖像画を描かせるのはお金持ちのステータスだったようですが、ルノアールのすばらしい力作ですら、モデルとなったイレーヌからも、注文主の両親からも気に入られず、長く使用人の部屋に掛けられていたそうです。話題の印象派とやらで描かかせてみようか・・・的なノリで注文したけど、やっぱり気に入らなかったわ、という感じでしょうか。

その後第二次世界大戦でナチス・ドイツがフランスを占領し、この絵を所有していたイレーヌの長女が捕らえられてしまいます。絵もナチスに押収され、ヒトラーの片腕であったゲーリングの個人コレクションの一部となっていました。戦後、イレーヌは絵を取り戻しましたが、その後すぐに売ってしまいます。記事によると実際に売ったのは、派手な生活で資産を食いつぶしてしまい生活費を得る必要のあったイレーヌの次女だったようです。いわば長女の形見となってしまった絵を、資産を食いつぶした次女が売ってしまう。たとえイレーヌ自身はこの絵にさほど愛着は無くても、心中は複雑だったかと思います。

その後イレーヌは91歳まで生きて、パリで静かに息を引き取きとりました。フランスのメディアが「世界中で知られた、青い服の少女逝く」と報じたそうです。

モネの睡蓮

壁いっぱいの大きさのモネ作『睡蓮池、緑の反映』が写真撮影可という、大盤振る舞いもありました。スイス国外には出たことのないという、縦2m・横4mに及ぶ大作です。

ほとんどの人はどちらかというと見るのを優先し、その後で遠慮がちに撮影していました。私も絵を堪能してからささっと撮影しました。大きな絵なのであまり前に行くと全体像が見えず、そのせいでなんとなくみんな遠巻きになってしまいます(笑)

   

混雑ぶりなど

この展覧会に行ったのは3月初め頃の夜間公開です。大混雑を予想していましたが、意外に空いている感じでほぼストレスなく見られました。会場をゆっくり一巡してから、さらにイヤホンガイドを借りて楽しんでだいたい3時間弱くらいでしょうか。展示点数が64点であまり多くなく、会場が広く絵がゆったりと展示されているのでとても見やすかったです。

会期は5月7日までですが、開幕39日にして入場者数10万人を突破したようです。見る予定がある方は少しでも早目がおすすめです。GW中はおそらくかなりの混雑になるかと思われます。

東京展のあとは、九州国立博物館(2018年5月19日~ 7月16日)と名古屋市美術館(2018年7月28日~ 9月24日)にも巡回する予定です。

それでは!

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