サントリー美術館で開催中の「河鍋暁斎 その手に描けぬものなし」を見てきました。だいぶ前に行ったのに、閉幕間際のご紹介で申し訳ありません。
暁斎は1831年に現在の茨城県古河市で生まれました。7歳で浮世絵師の歌川国芳に師事し、その後は駿河台狩野派の前村洞和や、洞和の師の狩野洞白陳信に入門しています。暁斎が38歳の時に明治維新があったので、幕末~明治にかけて時代が大きく動いたのを感じていたはずです。
明治になるとともに、御用絵師としての狩野派は衰退していきますが、暁斎は狩野派の絵師としての矜持を持ち続けます。今回の展覧会では、「狩野派絵師」としての暁斎も大いに楽しめます。もちろん、風刺画や妖怪画もたっぷり。羽織の裏に描いた血なまぐさい処刑場の場面というなかなかショッキングな絵まであります。
※以下、画像はすべて図録からです
暁斎の女性絵3点
「観世音菩薩像」(1879~1889年作)です。神々しくもあでやかな観世音菩薩にうっとりしてしまいます。透けて見える薄布や菩薩の装身具など、細部にまでぬかりなしです。近くで見れば見るほど、その細やかな筆遣いに感動します。
「地獄太夫と一休」は以前に渋谷のザ・ミュージアムでも会いました。今回はうれしい再会です。菩薩とはまた違う美しさと妖艶さを漂わせる地獄大夫。踊る骨たちも健在です。ちなみに、三味線をひく骸骨の上で踊り狂っているのが一休です。
「幽霊図」(1869~70年)。行燈の光に照らされた薄暗闇の中に佇む幽霊。暁斎の手にかかると、おどろおどろしげな中に、どこか儚げでもの悲しい雰囲気すら漂います。
菩薩に遊女に幽霊と、三者三様の女性像を描き分けているところに興味をひかれました。
今年は暁斎没後130周年だそうで、サントリー美術館のほかに神戸市の兵庫県立美術館でも大規模な暁斎展が開催されます。暁斎ファンとしてはうれしい限り! 兵庫まで行ってしまおうか・・・真剣に悩んでおります。
サントリー美術館の展示は今週末までですので、お見逃しなく。
オマケ
現在、東京国立博物館で展示されている暁斎の「龍頭観音像」です。力強い線で描かれながらも柔らかさを感じさせる観音の衣と,ギョロ目の龍が見どころです。
龍のアップ。この絵はとにかく大きくて、龍の顔もなかなか迫力ある大きさです。本館1階18室「近代の美術」の部屋で展示されています。4月14日までですので、お見逃しなく!
それでは!